生徒会長は隣のメガネ君

 二学期はさすがに音楽祭と仮装コンテストで時間を使ったのでもうイベントのリクエストはなかった。
 冬休みはしばらく榊と橘と柏木と過ごした。例の勉強会で。
 年末年始は叔父の家にいるように言われたので榊とは会わずに過ごした。変な感じだった。いつも一緒にいるのが当たり前みたいだったのに。



 新学期がはじまる少し前にマンション帰ったら早速インターフォンが鳴る。

「榊は帰ったの? 実家に?」

 ふと沸き起こる疑問。

「ああ、少し」

 榊に連れられてまた榊の部屋にいる。

「榊ってカオンさん以外にも兄弟できたの?」

 榊とカオンさんの間にそんなに問題があるように思えなかった。なんなら仲いいぐらいに見えたけど、なんで家に居づらかったんだろう。

「ああ、弟。何で?」

 すごく嫌そうに弟って言うな。弟が問題なんだね。きっと。

「ううん。なんとなく」
「それより! おせちってなんであんな不味いんだろ? アリスあれ作って! ハンバーグ!」

 なぜ正月明けにハンバーグなの?

「材料は?」
「あるから」
 というか買って待ってたの? あれ、私の番だっけ? まあ、いいか。



 今日の晩ご飯どうしても食べたいが足りない材料に納得しない榊は買いに行くと言い出した。スーパーまではたいした距離ではないけどわざわざ行かなくても……。

「別のメニューにしよ?」

 という私の提案はあっけなく却下された。この寒空わざわざ買いに行くの?

「私は嫌だからね! ねー! お腹も減ってるし……」

 減ってまではいないけど、榊の買い物に行ってる間ここで榊を待つのも微妙だし、私が行くのは断固として嫌だ!

「俺がさっと行って来るし。俺が作るから! どうしても食べたい気分なんだよ!」

 メニューはハンバーグ。ないのは卵と合挽き肉とパン粉。今ある材料でなんとか別メニューで今日を乗り切れるのに! わがままな奴!

「じゃあ、ゲームして待ってる」

 一人でゲームしてるのつまんないんだけど。

「うん。すぐに帰ってきて作るから。目玉焼きのせようか?」

 卵の椀飯振る舞いしても一緒だよ。

「いらない。それより早く!」
「ああ! じゃあ、待てて!」

 榊は鍵と財布を持って上着を着て慌てて出て行った。


 一人は暇だな! テレビでも観ようかな。ゲームする気にはなれないし。


 榊の携帯が鳴ってる。そういえばあれからは華音さんの電話にも出るようになった。また襲撃されたら嫌だというのもあるんだろうけど。いっつも最後は顔を赤くして切ってるし。なに言われてるんだろう。華音さんか柏木か橘かとちょとした好奇心で榊のテーブルに置きっぱなしになってる携帯を見たら『ツバサ』という文字があった。
 正直女性の名前じゃなくてホッとしてる。私バカだな。見なきゃいいのに。留守電になり、それからのツバサという人物は時間を開けずに電話してくる。急ぎかな? 出た方がいいんだろうか? 出ても榊がいなきゃ一緒かと考えて携帯とにらめっこしてる私。

 と玄関で
 ガチャガチャ
 ガチャ
 と聞こえた。よかった。榊が帰ってきた。

 ソファーから立ち上がり玄関にいる榊にツバサという人物からの電話を伝えようとそちらに向かった。
 廊下の扉が開いて私は固まる。誰? そこに見知らぬ高校生の男の子がいた。そう私と同じくらい。なぜかこの時期にも関わらずどこかの高校の制服を着ているからすぐに高校生だとわかる。廊下で固まる私。廊下の扉を開けた彼も開けたまましばらく固まる。
 見つめあい、しばらくの沈黙。



 先に動いたのは彼だった。開けたままの扉を閉めた。

「……陸は?」
「榊、榊君は買い物に行ってるよ」
「そう」

 と、私のことを気にしないでコートを脱いで私の前を通り過ぎてソファーの背にコートをかける。

「陸が真面目にやってるって言ってたのに、女の子連れ込んで……ねえちゃんも甘いな」

 ねえちゃん・・・?

「あ、あのあなたは誰?」

 何となくは想像つくけど。電話、ねえちゃん、榊の家の鍵を持ってる。

「それよりかさ!」

 突然彼は私の方に来る。背も榊ぐらいあるし整った顔立ち、榊と同じように黒髪、なのになぜか雰囲気が全く違う。そしてどこか捨て鉢な態度。