両手で私の体を引き寄せると、大切なモノに触れるように優しく抱きしめ、そっと額に唇を寄せた。


なんとなく感じた安心感に目を瞑ると、そのまま、瞼、鼻先、頬…と滑るようにキスを落としていく先輩。


ここにいることに、今はただ、夢中なまま。いっそ雨音に二人ともとかして欲しいと、願った。


…そうすれば肩書きも 実績も私を語るすべては消える。


そうなれば……きっと、先輩は、ずっとここにいてくれる。


「…水月先輩」


この瞬間の私は、先輩の目のなかに どんなふうに映るのだろうか。


「…そう、それでいいよ。」


片手で髪を梳きながら、印をつけるように一つ、髪にキスを落とすと


「いつだって、僕は君のことしか考えていないから。」


真性な、残酷な愛に微笑んで
唐突に始まる食べられるようなキスを合図に、お互いに冷静さを失った瞳を覗き込んでまた、底なしの愛に溺れる。




…わかるのは、全てが終わってからなのだから。


「先輩…行かないで」



せめて、今だけはーーー。