「逃げようとするのは、本心?…それとも、期待してるの?」


そう言いながらも掌は止まることなく、確かめるように体中を撫でていく。


触れたところ全てが、先輩の体温が移ったように熱を上げていく。


「もっ…寝よう、水月先輩…っ」


このままだと、流されてしまう。戻れなくなる。


懇願するように、その手から逃れるように体を動かし、潤んだ瞳をそのままに先輩と目を合わせた。


…こんな愛を知るために、さまよってきたわけじゃない。


「ダメ。逃がさないよ。」


少し先輩から感じた躊躇、でもそれはすぐに打ち消され、一瞬止まった手は、再び動き出す。


「…君はいつだって、僕を見ているようで見ていない。」


耳元で彷徨う、苦しそうな声。


少し意識を反らせば、聞き逃してしまいそうな言葉。


「……僕を見てよ。」


そして一言、確かめるように、名前を呼ぶ。