「…寒いね。今夜は、とても冷え込むらしいよ。」


部屋に入って窓の外に視線を移すと、独り言のようにそっと呟いた先輩。


撫でるように窓に指を滑らせると、そのままカーテンを閉め、ようやく私の方に振り向いた。


「…さてと…風邪を引くといけないから、早く布団に入ろうか。」


まだ崩されていない布団の上で、先輩を見上げニャーと一言鳴く猫をひと撫でしてゆっくり床におろす。


「早くおいで。」


まるで猫にでも話しかけるように、甘い声で誘う。


どうしていいかわからず、立ち尽くしていた私にそっと手を伸ばし、当然のように背中に手を当てベッドへと誘導した。


「…緊張しているの?」


楽しむように、嗜めるように、私を見つめる。その瞳が、何を考えてるのかわからない瞳が、いつも怖かった。


「…怖がらないで。大丈夫…僕はいつだって、君のことしか考えていないから。」