「くぁ、よく寝た」
ぐ、と伸びをするこの男、確か椎名といったか
おもむろに煙草に手を伸ばしてかちりとライターの火を着ける
慣れない匂いが漂う
「んで、お前なんであんな所で寝てたん?」
フー と煙を吐き出して笑う
ただ、その目はこちらを探るように細められる
「…………………」
「…まあ、なんか訳ありなんだろうけどな」
居心地の悪い沈黙が続き、
「でも、この辺あんま治安よくねぇから、お前みてぇなおきれいな顔
だと悪いお兄さんに拉致られて回されちゃうよ?」
んで、いつの間にかいかがわしいビデオに出演ーなんて
ザラなのよ
笑えない言葉を笑顔で宣う
「わかったらさっさとお家に帰りなさいな」
興味をなくしたかの様にガサッと新聞を広げる
ーーヤンキーみたいなのに新聞とか読むんだ
なんて失礼なことを思いながら
「帰る家なんてないわ…」
と溢してしまう
この得体の知れない男に話してどうなるかなんて
何も考えらえなかった
それでもつい、出てしまった言葉から逃げるように
起き上がる
「家出娘を匿う気はねぇよ」
突き放すその言い方に安心した
この人なら、私の懺悔を聞いても反応しなさそう
ただ、その重みに耐えかねた、それだけだった
「人をね…殺したの……」
ピクリと片眉をあげた
「…ううん…本当に死んだかどうかもわからないけど…
気味の悪い顔で笑いながら…可哀想に、って…
私の体を撫で回して、
私の中に土足で上がり込んできて…ただただ…気持ちが悪くて…痛くて、
そばにあった置物で何度も何度も殴りつけて……
そしたらね
そしたら、そいつ…動かなくなって…血もたくさん出て…
怖くなって逃げたのよ」
「何故そんなことに…?」
新聞から目を離さずに問われる
「売られたの…父に…」
息を飲む気配がした
「そこそこの会社の社長でね、大きな取引の為なんですって」
腐ってやがる…と唸り
新聞を投げて寄越した
「死んでねぇよ、多分」
そこそこの会社と取引の為に若い女を要求するってことは
それなりの相手なのだろう、と
「んなとこのやつが殺されたなんてなったら新聞載るだろうが…」
そんな記事は何処にもない、と
「……死んでない…?………私…殺して、ないの…?」
痛そうな顔で男は頷く
「…まぁ、絶対とは言いきれねぇが、な」
可能性して薄れた、と
「…どうして」
すがる様に男を見れば
「そりゃお前、血だらけの服来て行き倒れてたら何か穏やかじゃねえこと
あったんだと思うさ」
少し照れた様に頭を掻いた
「お前…家に住むか?」
涙が溢れた
「返事しねえと了承ととるぞ」
大きな手で髪の毛をぐしゃぐしゃに撫でられる
ーーーあったかい
この手を離したくないと、思った
ぐ、と伸びをするこの男、確か椎名といったか
おもむろに煙草に手を伸ばしてかちりとライターの火を着ける
慣れない匂いが漂う
「んで、お前なんであんな所で寝てたん?」
フー と煙を吐き出して笑う
ただ、その目はこちらを探るように細められる
「…………………」
「…まあ、なんか訳ありなんだろうけどな」
居心地の悪い沈黙が続き、
「でも、この辺あんま治安よくねぇから、お前みてぇなおきれいな顔
だと悪いお兄さんに拉致られて回されちゃうよ?」
んで、いつの間にかいかがわしいビデオに出演ーなんて
ザラなのよ
笑えない言葉を笑顔で宣う
「わかったらさっさとお家に帰りなさいな」
興味をなくしたかの様にガサッと新聞を広げる
ーーヤンキーみたいなのに新聞とか読むんだ
なんて失礼なことを思いながら
「帰る家なんてないわ…」
と溢してしまう
この得体の知れない男に話してどうなるかなんて
何も考えらえなかった
それでもつい、出てしまった言葉から逃げるように
起き上がる
「家出娘を匿う気はねぇよ」
突き放すその言い方に安心した
この人なら、私の懺悔を聞いても反応しなさそう
ただ、その重みに耐えかねた、それだけだった
「人をね…殺したの……」
ピクリと片眉をあげた
「…ううん…本当に死んだかどうかもわからないけど…
気味の悪い顔で笑いながら…可哀想に、って…
私の体を撫で回して、
私の中に土足で上がり込んできて…ただただ…気持ちが悪くて…痛くて、
そばにあった置物で何度も何度も殴りつけて……
そしたらね
そしたら、そいつ…動かなくなって…血もたくさん出て…
怖くなって逃げたのよ」
「何故そんなことに…?」
新聞から目を離さずに問われる
「売られたの…父に…」
息を飲む気配がした
「そこそこの会社の社長でね、大きな取引の為なんですって」
腐ってやがる…と唸り
新聞を投げて寄越した
「死んでねぇよ、多分」
そこそこの会社と取引の為に若い女を要求するってことは
それなりの相手なのだろう、と
「んなとこのやつが殺されたなんてなったら新聞載るだろうが…」
そんな記事は何処にもない、と
「……死んでない…?………私…殺して、ないの…?」
痛そうな顔で男は頷く
「…まぁ、絶対とは言いきれねぇが、な」
可能性して薄れた、と
「…どうして」
すがる様に男を見れば
「そりゃお前、血だらけの服来て行き倒れてたら何か穏やかじゃねえこと
あったんだと思うさ」
少し照れた様に頭を掻いた
「お前…家に住むか?」
涙が溢れた
「返事しねえと了承ととるぞ」
大きな手で髪の毛をぐしゃぐしゃに撫でられる
ーーーあったかい
この手を離したくないと、思った
