「玄関のとこで待ってて!」

「…うん」


たぶん不自然だったと思う。

でも、今の私じゃあこれが精一杯だった。



慧と一緒にいられるのも、

これが最後かも…。


慧がいなくなったら、

私には誰もいなくなる。


小さい頃、両親に捨てられ

1人ぼっちだった私を、

妹のように面倒を見てくれた。

今は1人暮らしだけど、

一緒に住んでた頃のように接してくれる。


「翼!」

「…慧」

「ほら、帰ろ!」

「…」

「翼?」


無言の私を心配して、

声をかけてくる。


その声を聞くと、また涙が出てくる。

顔を上げ慧を見つめた。


もう無理だ……。


「え…泣いてる…の?」