お願いだから…

あの雨の日、私はどうして…あなたを…

〜ルイナside〜
「おっはよー!ルイナ!」
いつもどおりの朝、登校途中で友人のイスケが飛びついてきた。
「朝っぱらから元気だねぇ、イスケは、おはよっ。」
夏目イスケは名前からすると明らかに男だけど、れっきとした美少女だ。
私とは小学生の頃からの付き合いで、高校は同じところに行こうと約束して、2人で専願も併願も受けに行った。
何でも話せる、唯一無二の友達、それがイスケだ。
「ってかルイナさ」
「んー?」
「彼氏と登校、最近してないよね、どして??」
彼氏…そう、私には逆倉イズミっていう彼氏がいる。
中学の頃に知り合って、中1の冬から付き合ってるからちょうど5年目になる。
けど、イズミは県外の有名大学を目指していて、今年から猛勉強の日々だ。
朝一緒に登校しないのは、イズミを少しでも長く寝かせてあげるため。
だから、全然苦じゃない、一人での登校だ。
「だって、イズミ眠そうなんだもん、寝かせてあげたくてね。イズミも『一緒に行くー!』って言い張ったけど、授業中寝るくらいなら朝寝なさい!って言ったら、素直に聞いたよ。」
「わー、ルイナの権力すごー」
「権力って何よ!」
イスケと話しているとあっという間に学校に着いた。
なぜか、入口は閉鎖されていたけど…
その原因が、まさか、あんなことだったなんて…

〜イズミside〜
「ふあー…あー、眠ーい…」
昨日徹夜したせいで朝の目覚めは最悪だ。
難関大学を目指すと決めたものの、成績は伸び悩むし、寝不足続きだし、いいのかね、俺…
「早くルイナに会いたい…」
野坂ルイナは中1の冬から付き合っている俺の彼女だ。
ちょうど5年目になる今年、俺は来年ある大学受験のため猛勉強中。
おかげで朝は一緒に登校できない。

学校に着くなり、何やら玄関が騒がしかった。
「朝からなんだよ、元気だ…え?」
前を見ると、口に手を当てたルイナと涙を流している夏目がいた。
「おい、ルイナ、夏目」
「イ、イズミ…」
「逆、倉…くん…どうしよ、あたし…」
「おい、落ち着け、何があった」
「…あ、れ…」
ルイナが指を指した先には…首吊りになっている羽間ダイチの姿があった。
ダイチは俺とルイナ、イスケとよくつるんでいた親友だ。
俺たちは4人いつも一緒になって集まって、悩みを打ち明けたりバカやったりしてる。
でも、なんで…はあ?
「ダイ、チ…?」
「嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だあああああ!!」
隣で叫び声が聞こえたかと思うと、夏目はダイチに向かって走っていった。
「コラ、君!今ここは立ち入り禁止だぞ!」
「嫌よ、嫌だって!ダイ、チ…ダイチいいい!!」
薄々勘づいてはいたが、夏目はダイチに想いを寄せていた。
「ね、ねえ、イズミ…」
「どした」
「ダイチくん、どうして…『殺されたの?』」
「は?」
今、ルイナはなんて…?
「今、なんて…?」
「ダイチくん、殺されたって…」
俺の胸に泣きついてくるルイナを必死になだめながら思考を巡らす。
俺はてっきり、首吊り自殺だと思ってた。
最近あまり学校にも来てなかったし、来てもサボってたっていうか、本気の体調不良でほとんど保健室にいた。
気も病んでただろうから、俺たちが相談に乗ってやれなかったからって、自分を責めようとしてた。
けど、殺されたって…どういうことだよ。
ルイナをキツく抱きしめ、俺も声を殺して泣いた。