「オーナーもわかっているはずです!」

激しい怒声が、社長室内に、響き渡った。

「前回、柳川に引き抜かれた女達のほとんどが、給料の未払いや、ペナルティの厳しさなど…条件が違うと、最終的には、うちに泣き付いてきた!」

松浦の言葉に、オーナーは腕を組んだ。

「そいつらを、また雇用したが!結局みんなやめていきましたよ!」


「仕方がないことだ……」

オーナーは、ため息をつき、

「少しでも条件がよければ…彼女達は、そこに行く。誰だって、この商売をずっと続けようとは、思っていない。できれば、抜け出したいと…」

「オーナーは、甘すぎます!」

興奮して、ディスクを叩く松浦に、オーナーは軽く溜め息をつき、

「この店は、できるだけ…彼女達に、気持ち良く働いて貰う空間でありたい。男と女という…人間関係を商売にしているのだから…」
オーナーの言葉に、松浦は納得しながらも、納得できない。

なぜなら、一番損をしているのは、華憐であり、オーナーだからだ。

松浦は、反論をやめた。

自分もまた…そんな華憐を愛しているのだ。だからこそ、簡単に割り切るホステス達が、許せないのだ。


「………今は時代が変わり…キャバクラていう名で、一部アイドルのように持ち上げているメディアもありますが…….私達は、水商売です…。何も生み出してはいない。だからこそ…人の繋がりだけが、頼りなのです」


「松浦……」

松浦は、泣いていた。

「私は、それを裏切る……やつらが…。お客は、裏切るでしょう…だけど、一緒に働く仲間だけは、裏切ってはいけなんです」


「松浦……」

オーナーは椅子から立ち上がり、松浦の肩を叩いた。

「仕方がない……。皆、生きることにせいいっぱいなんだ。働いてくれた…それ以上を望んではいけない…」

松浦の気持ちは、痛いほどよくわかった。ホステスも、悪くはない。

(柳川か……)

あとは、店同士の問題である。そう個人というよりは、華憐とT.L.Cの問題だ。