しく、しく、と悲しげな声がした。


見れば小さな男の子が泣いている。


どうしたの


尋ねても男の子は泣くばっかりで、答えようとはしない。


おうちはどこかな。


悲しげな泣き声は止まらない。


それでもやっと、男の子はしゃくりあげながら答えた。


お、お父さんがいなくなったのっもう、ずっと、あ、会えないの


……そっか


優はふいに、父が亡くなった時のことを思い出した。


母の涙にいろどられた、悲しい記憶。


「……俺も、大切な人がいなくなっちゃうんだ。」


男の子が顔を上げた。


「大切な人、みんないなくなるんだ。父さんも、母さんも、あいつも…っ…」


頬を熱いものが伝っても、とめる方法がわからなかった。


泣いてはいけない。


泣いてはいけないのに。


心の中に溜めていた悲しみが溢れて止まらなかった。


小さな手が、そっと頭を撫でてくれる。


赤くなった男の子の瞳は、不思議と母の瞳に似かよっていた。


それは優の瞳でもあった。


泣きつかれて気がつけば、優はアパートのベッドの上で横になっていた。


夢を見ていたらしかった。