「はい……?」
この人は、何を、言っているのだろう。
「此処は…何処ですか?」
あぁ…そうか。道に迷ったのか。
「えっと……どの道から入りましたか?」
「…………………」
どうしよう。返事が無い。
「……あの、僕は……どうして此処にいるのでしょうか。」
……ん……?道に迷っているのではないのだろうか。
「僕は…どうして此処にいるのか、そして、自分が誰だか分からないんです。」
えっと……あれかな…?よくドラマとかで見る、あの、記憶喪失……みたいな。
でも、そんな事、本当にあるのだろうか。
「あの……すいません。あなたに聞いても分からないですよね……」
記憶喪失って、どうやってなるんだろう、事故とかで頭を打ったり、そんな感じではなかっただろうか。
「あ……あの…聞いてますか……?」
はっ……!聞いて無かった。
「あ…えっと。取り敢えず、名前、分かりますか?自分の。」
「……………………」
凄く考えている様子…
記憶喪失。だと仮定しよう。そうだとしても、この人は事故に遭った感じでもない、普通の人だ。
「すいません…どうしても思い出せません。何故でしょう。」
私に聞かれてもそんな事は分からない。
私は、早くこの状況から抜け出したい。
「でも……あなたの名前は分かるんです。」
えっ…?ん…?どういう事?
「深川ちさき、さん。ですよね…?」
……!どうして……私の名前を……⁈
