後ろに夏目くんが居ると思うと、心臓がドクンドクンっとうるさい。


落ち着け。平常心、平常心。


「ねぇ」


急に聞こえた、声。


夏目くんの声。それだけなのに、ビクッと肩が揺れる。


「な、何ですか……」


後ろは向かずに返事する。


「なんで、こっち見ないわけ?」


向けるわけないじゃん。どんな顔して話せばいいのか分からない。


あのキスを忘れたわけでもない。