私の唇には温かく、柔らかいものが触れていた。 それが夏目くんの唇だという事に、自分が夏目くんとキスしている事に気付くのに随分と時間がかかった。 現実ではほんの数秒の出来事だったのかもしれない。 けれど、私にとっては数分にも感じられるほどだった。 やっと離れた唇。 夏目くんの目が、私を捉えたかと思った時 「……好きだ」 そう、夏目くんが呟いた。 そういった夏目くんは、悲しそうに苦しそうに笑っていた。