前編 かすみ草の恋 ー大学生編ー

家について一息つくと
紗江さんは自分の過去について話し始めた。


「中学の頃からかしらね…
私たちの住む地域は何故か凄く
不良というものが多くて
垢抜けてくるとみんな何故かそういう道にいたの。特に家庭環境とかそんなもの
関係なくね…
で、私はいつもサヤカとサヨコとサユリ
の4人でいたの。なぜか、4人とも名前の頭文字にサがついて妙に気が合って…
で、サヨコの従兄弟が陽介とユウねっ!
隣の中学で近所だったのと、サヨコと
陽介は従兄弟同士で異性で年も同じなのに凄く仲良くて…
そんな流れで私たちは陽介たちと中良くなったの。
高校に入った頃に私たち女4人でチームを作ったの。
初めは4人だけの小さなグループで…
でも、私たちは男なんかに負けてなるもんかっ!ってバカみたいに張り合って
合気道なんか習いに行っちゃってね!
気付いたら私たち凄く強くなってたの。
陽介たちもそれはそれはヤンチャでね。
ユウもそれにがっつり影響されて
喧嘩だけは鬼強くなっちゃったんだけどね(笑)
で、陽介の親友の1人のカイトとサヨコが付き合い出したの。2人とも美男美女で
誰もが羨むカップルだったんだけど…
2人きりでの行動が増えてきた頃から
様子が変わりはじめてね。
どうもその頃2人は工藤と知り合ったみたいなの…」


アイリちゃんがハッと息を飲むと
紗江さんは優しく微笑むと
話を続けた


「工藤と知り合ってからの2人は
あの人は良い噂を聞かないけど本当に
良い人だっ!って言ってたの。
もちろん、私たちだって、噂だけで人の事を判断するようなのは1人もいないから、その言葉を信じてたんだけど…
だんだん、2人は私たちから距離を置くようになったの。
気づいた時には遅かった……
もう2人は後戻り出来ないくらいになってた。
薬が無いと幻覚幻聴に悩まされ
ゾンビみたいに薬を求めて彷徨い歩いた
私たちは必死になって止めたけどダメで…これはもう警察に行って止めてもらうしかないってなったんだけど…
その前に、カイトが海に身を投げたの。
いや、あれは自殺なんかじゃない!
利用されるだけされて消されたに違いない!!その後、サヨコも………」


「おいっ!紗江!!
サヨコは病死って言ってたじゃねぇか!
サヨコの最後はビックリするくらいに
細くて、サヨコの死を受け入れられずに
カイト君は自殺したって……
紗江と兄貴は俺にそう言ったじゃねぇか……なんでだよ…サヨコ……」


ユウタロウが力なく嘆くと


「ユウ…ごめんね…ごめんね!
ユウは本当の姉のようにサヨコを
慕っていたから言えなかったの…
カイトの両親やサヨコのパパとママも
まさかうちの子か薬中でボロボロだったなんて今だに知らないの。
カイトは水死で自殺。
サヨコは拒食症で死亡したと
思っているの。
ユウの事を思ったら本当の事言えなかった…陽介も、仁も、サヤカも
サユリも言えなかったのよ……」


と、紗江さんは目に涙を貯めながら
も気丈に振る舞ってはいるものの
ナカナカ次の言葉が出てこないでいると



ミカがそっと紗江さんの手を握って
優しく微笑むと


「…あ ありがとう ミカ…
私は大丈夫よ?ユウの気持ちを考えると
辛いだけ……」


ミカは優しく紗江さんを抱き締めると


「サエちゃんは何も悪くない…
だから、自分を攻めないでね…」


すると紗江さんは堪らず涙をポロリと流すと


「ミカ…本当にありがとう!
先を話すわ…」


と、言って溢れる涙をギュッと押さえ込んで元の強気な紗江さんの表情に戻ると
ミカはゆっくり紗江さんから離れた。