このまま、わたしを連れてって。 どこか遠くに─── ーー 「ーー知奈」 どれくらい眠っていたのかはわからない。 でも、わたしを呼ぶその声に、意識を呼び戻される。 冷え切った体が暖かいものに包まれ ぶたれて腫れ上がる頬に 優しくて大きな手が重なった。 「……知奈っ」 そして何度も何度も名前を呼ばれた。 わたしという存在を確かめるように、噛みしめるように。 「───瀬、戸内くん?」 「ごめん」 わたしは彼に、力強く抱きしめられていた。