冷酷男子の溺愛




キュッと唇を噛みしめる。

そうしないと、ふたりの仲睦まじい光景と瀬戸内くんの言葉で

泣きそうになるから。



「なに、泣くの?」

「……」

頬杖をつきながら、ふっと口角を上げて笑う彼。


なんだか嫌になるくらい憎たらしい。

泣かない。泣くわけない。



「悔しいだろ、何も出来なくて」

「……うん」


悔しい。瀬戸内くんに連れて来てもらえなかったらわたし、何も知らなかった。



「だったら俺に話合わせろ」


浮気を何度も繰り返す悠

助けるようなことを言ったり、突き放したり優しいのか優しくないのかわからない瀬戸内くん。


どちらが正しいか、とかそんなのは今はまだわからない。



ーーだけど



「わかった、わたし見返す」



もう、都合のいい女でいることだけは
嫌だから。



もう、全部全部、終わりにする。