冷酷男子の溺愛




「────」


ねぇ、瀬戸内くん。


瀬戸内くんは騒がないでと言ったけど


違うよ、騒げないんだ。


声が出ないだけ────



付き合っているのは、わたしのはずなのに、どうして。

わたしはどうすればいいんだろう。



「昨日、あの人のSNSを見てて見つけたんだよ、今日の10時、ここに来るって言ってた」

「……」


放心状態のわたしに、彼は平然と話を続ける。



だけど、その向こう側で


「……っ」


2人が体を寄せ合って、笑っている様子が視界に入ってきて思わず目をそらした。



「目をそらすな、あれが現実」


別に大丈夫?って心配して欲しいわけではない。

だけど降りかかるのはあまりにも厳しい言葉だった。

確かに図星だけど、今のわたしにはひどく胸に突き刺さる。




「いい?キミがいくら泣いたところで
悩んだところで何も変わんない」


「……」


今日だけのやりとりで、瀬戸内くんとの距離がぐっと縮まった気がしてた。


でもなんの抑揚もない冷え切った声で

わかりきっている事実を突きつけられて

不安で指先が震えた。