冷酷男子の溺愛




しばらく歩き続けるわたしたち。


「ねぇ、いい加減場所くらい教えてよ」

「ん、もうすぐ着く」


さっきからそればっかりでもう聞き飽きたよ。


嘘つき、ほら吹き、ろくでな……


「……ほら、ついた」


あ……ごめん。どうせまた、その場しのぎの嘘だろうと思ったわ。


彼の言うことが事実だったことに、わたしはあからさまに落胆した。


そうこうくだらないことを考えながら、たどり着いたのはコーヒー専門店。


コーヒー嫌いのわたしには

一体なんの嫌がらせかと思った。


「中入るよ」

「いやいやいや、わたしこう見えてコーヒーダメですから」


今、店の前の匂いだけでも結構頭痛くなってるくらいダメなんすよ。


「オレンジジュースもあるよ」

「本当に?」

意外な言葉に目を輝かせながら、答えた。ワクワク、ドキドキやったぁ、良かった。高まるテンション。



「━━━━嘘だけど」


わたしは甘かった。こやつが他の人の何倍も屈折していることを忘れてた。

ジワジワとくる苛立ち。



「いやだいやだ帰る」

「うるさい、黙れ」

「ぐはっ」



背中あたりの服を掴まれ(服なので平気らしい)、変な声が出てしまった。


わたしが周りから奇怪な目を向けられていることに

彼は肩を揺らしながら笑っていた。