冷酷男子の溺愛





「傷つきたくなかった。俺はもうこれ以上傷つきたくなかったんだ。

裏切るのも、裏切られるのも、もうこりごりだったんだ」


「……」



両親の離婚。

浮気される、恐怖。


大切な人が離れていく、哀しみ。




たくさんのことを乗り越えてきた彼だからこそわかるその気持ちに、わたしは静かに頷いた。




「そんな俺にもどうしても大切にしたい人が出来た。

だけど、俺と付き合って傷つけるくらいなら、誰かと幸せになって欲しいって思ったんだ。

他の誰かと付き合って、毎日笑っていてくれるのであればそれでよかったーーはずだった」



「でもそんなのは、所詮は偽善にしか過ぎなくて。

欲しいもんは、どうあがいたって、欲しいに変わりなかった。

ただ、俺はずっと自分の気持ちに嘘ばかりついて、言い訳ばかりして逃げて、結局大切にしたかったものも、傷つけたんだ」




キミの瞳が揺れている。

何度、もがき、苦しんだのだろう。