冷酷男子の溺愛





会話のない空間にいるのは、結構耐え難いものだった。


いつもはうるさいくらい言い争いをしているから、お父さんとお母さんはわたしたちを二度見して「何ふたりケンカでもしたの?」とでも言いたげで。


沈黙が、わたしたちには似合っていなくて、居心地が悪かった。


「……」

わたしは、逃げるように家を出て、学校に向かった。






その日、いつもより早い時間帯に家を出て、気づく。


……一人で学校に行くのは、いつ以来だろう。

いつも、なんだかんだ言いながらも、一緒に登校していた。

口げんかの延長戦って感じで、騒がしくこの道を通っていた。


晴れの日は、ふたりで自転車で。

雨の日は、跳ね返る雨水にぶつぶつ文句言いながらもふたりで並んで、歩いて、登校した。



たった、それだけで、十分すぎるくらい幸せだったのに。


なんてことのない、幸せを、わたしが、崩してしまった。