「……」
どうしよう、やっぱり、少しだけ話すことにためらう。
自分の気持ちを相手に見せるって緊張するし、それよりも、やっぱり
「────不意に、目の前にひとりの男の子がいるの、どこか寂しそうな、男の子」
こんな話したって、信じてもらえないと思ったから。
「は、」
ほらほらほら。そういう顔するの、わかってたんだよ。
何言ってんの、こいつ。って頭おかしいんじゃないかって思われてるよ、絶対。
「───目の奥に、映っては消えてを繰り返して一瞬その子が笑ったと思ったら、消えるの」
「……」
「消えないで───って思うのに、消えるの。頭がいたいよ、瀬戸内くん」
長い長い沈黙の後で。静まり返る部屋で。
彼は、そっと、笑った。
まるで、あの日の、少年のように、そっと。
「────頭が痛くなるくらいなら、忘れた方がいい」

