冷酷男子の溺愛




ぴゅーと、ひとつ、風が吹く。


そよ風に乗せられて、ほのかに香るキンモクセイと、微かに震えるレジャーシート。


────ああ、と、流れる月日を感じた。



「なに急におもむきを感じてんの」

呆れ顔をして、ボソッとつぶやく瀬戸内くん。



「うるさいな……わたしは感慨深い人間なの」


貴様なんぞに、わたしは到底理解できないのだよ。

そんな想いも込めつつ、ドヤ顔をする。



すると、急に拓ちゃんが笑い出した。



「はははっ、お前たちのやりとり見てると、笑わずにはいられないよ」


それはそれは嬉しそうに、拓ちゃんは笑っていた。




「どしたの、拓ちゃん」

「いろいろと思い出してた」




拓ちゃんは懐かしそうに、この辺りの風景と、そして何故かわたしたちを


愛おしそうに見つめていた。