冷酷男子の溺愛





「おい、お前急にどうしたんだよ」

「べつに」

「……ったく」



別に、機嫌が悪いわけじゃない。

ただ、今こうやって一緒にいることに対して意識してるのも



優しさに触れるたびに浮かれてるのも、

わたしだけなんだって思ったら急に虚しくなっちゃって……



ってわたしは乙女かよ!


……はあ、面倒臭い。

自分がこんなに面倒臭い人間だってことも知らなくて、さらにへこんだ。



「……」


情けない。こんなんじゃダメだ。

だって、あの日から決めたんだから。


拓ちゃんとの別れの日、その当時のわたしはそれが本当の別れだとわかっていなくて

コンビニにでも行く程度のものかと思ってた。



でも、確かにその日に言ったんだ。





『……知奈、悪いな、みんなを頼む』

『わかった、任せて』




拓ちゃんの行き先がコンビニではないと理解したときだった。



泣き崩れるお母さんと、支えるお父さんを見たとき


わたしは遊び盛りで、反抗期真っ只中で夜も友達の家を転々としていた自分が恥ずかしくなった。


そして変わろうと思った。


……もう、末っ子だからって、わがままは言わない。


……もう、みんなを守れるように、強くなるって。


ーー拓ちゃんとの約束だから、そう、決めたの