真夏の高校生探偵記


 
 -金剛家 

 「夏男さん、先ほどの話は本当なのですか?」

 富士は夏男に尋ねた。

 「母上…いったいどこまで聞いていたのですか?」

 「あら、冬助さんがいらしたときから、聞いていましたわよ」

 「…盗み聞きなんて…なんと趣味の悪い」

 春子が呟いた。

 「盗み聞きなんて失礼だわ!…普通は妻である私に一番に話すべきですわ。私に黙ってこっそり姉弟内だけで話しなんかしてずるいんじゃないかしら?」

 「確かに、母上がいない間に話してしまったのは事実です、それは申し訳ありません」

 「な、夏男!」

 「あら、いいのよ。わかれば。春子さん、あなたもみっともないんじゃないかしら?夏男さんらしく素直になったらいいじゃないの」

 金剛家では、春子と富士が毎日のように争っていた。

 善三郎は親子喧嘩だといい、気にしなかったが、娘の秋子は姉と母の喧嘩を見てはいられなかった…。

 「お、お姉様、お母様…」

 「な、なによ?秋子」

 「秋子さんどうしたの?」

 「喧嘩はやめてください…お父様が亡くなったのですから、家族まとまって…」

 「何を言うかと思えば、そんなこと?」

 「秋子さん、それは無理な話ね、春子さんが自分の非を認めて謝罪するまでは」

 「母上、よしてください、それ以上。姉さんも、秋子の言う通り今日は父上が亡くなったんです、今後の事も話し合うべきです、家族みんなで」

 金剛家の当主、金剛善三郎は、金剛町の町長を務めており、町の行事なども果敢に行い、町の人からも慕われていた。

 しかし、ある一方の噂では、裏金を使い豪遊していたという話もある。

 本人が亡くなった今は、真相はわからずのままだが…。

 「夏男、わかったわ。でも、冬ちゃんがいないじゃない」

 「43にもなって『冬ちゃん』何て呼ばれたら冬助さんも嫌なんじゃないかしら」

 「お母様!」

 「秋子、悪いが…冬助を迎えに行ってくれないか?…きっと金剛パチンコ店『ゴールドメッキ』にいるはずだ」

 「わかりました、お兄様。行ってみます」

 夏男に言われ、秋子は冬助を迎えに金剛商店街のパチンコ店『ゴールドメッキ』に向かった。

 富士と春子の口喧嘩は続くことになった…。
 

 -金剛パチンコ店『ゴールドメッキ』

 「チッ…しけてやがるな」

 冬助は、あれからというものパチンコ台の前に座りパチンコを打っていた。

 「この台外れだな…チッ。持ち金も底をつきそうだし…帰るか」

 冬助が席を立とうとしたその時、誰かが店へはいってきた。

 そして、客がどよめき始めた。

 「お、おい。あれってもしかして…?」

 「きっと、そうだよな。『氷の悪魔』って呼ばれてるやつだよな…?」

 店内がざわつき始め一人の好青年が冬助に向かって歩み寄ってきた。

 「これはこれは…『飛龍の稲妻』…金剛冬助さんじゃないですか」

 「…てめぇは氷室政樹」

 氷室政樹…金剛町を含め多くの町のパチンコ店で様々なパチプロ(パチンコのプロ)と戦い、勝利し敗北者には外道と言えるほどの罰を与えたという悪魔のパチプロだった。

 政樹は負けなしパチプロと呼ばれていたがたった一回だけ、とあるパチプロに負けたことがあるのだった…。

 冬助も以前、政樹と勝負し負けた過去があった。

 「『飛龍の稲妻』が、何故こんなしけた場所で一人でパチンコなどしているのです?」

 「てめぇには関係ねぇだろ」

 「確かに、そう言われれば関係ありませんね。ですが、貴方にとっておきのとある情報を手に入れたのですよ…それをお教えに参ったのです」

 「とある情報?」

 「そうです。初めて私を負かしたとあるパチプロの事です」

 「ふん、そんなこと俺には関係ないし興味もない…さっさと帰れ」

 「まぁまぁ、話を聞いてください」

 「ふ…冬助お兄様!」

 政樹は話そうとした直前、冬助を迎えに来た秋子がやってきた。

 「秋子。何の用だ?」

 「お母様と夏男お兄様がお呼びです…ので迎えにきました…」

 「御嬢さん、申し訳ないですが、こちらの方に少しお話があるのです…」

 「おい、秋子」

 「は、はい!」

 冬助は秋子に声をかけると、そそくさと店内を後にした。

 「お、お兄様!」

 秋子も後を追うように店内を後にした。

 「……逃げられましたか。まぁ、いいでしょう。代わり奴に頼めばいいだけですからね…」

 政樹も独り言をつぶやくと、部下と共に『ゴールドメッキ』を後にした。