春斗に呼ばれた和也は実緒の病室へ急いでいた。すると病室の前で子供が立っていた。

「君は確か、さきちゃんだったね。どうしたの?」

「おねいちゃんは、まだ良くならないの?あのね・・おねいちゃんは悪くないんだよ。本当はれい先生がこっそり食べていいよって、でも、誰にも内緒だって・・・。だから、謝りたくて・・ごめんなさい」

「ありがとう。よく話してくれたね。ママが心配してるから早く病室へ戻りなさい」

実緒の病室に入ると、顔に涙の後がある寝顔が見えた。

「和也、これを見てくれ。俺は採血のオーダーなんて出してないのに、無理矢理ナースに押さえつけられて、暴れるからあなたのせいだと言い何回も針を刺して挙句、採血出来ずに過呼吸の発作が始まったのをそのままにしていったそうだ・・・。おかげで両腕がこのさまだよ。」

「クソッ!どうして実緒ばかりこんなひどい目にあわなくちゃならないんだよ。この間のことといい・・・。
さっき、病室の前にさきちゃんがいたんだよ。麗先生がこっそり内緒で食べていいよって言ったそうだ。ごめんなさいって・・・。」

「俺、おやじに全て話してくる。このままじゃ実緒に何されるかわからない」

「とにかく、実緒のそばに俺たちがいつも、ついていられるようにしよう。」

「なあ兄さん、昔を思い出すよな・・。実緒が肺炎で入院するたびに、こうしていつも病室にいたよな・・。
実緒を守りたくて医者になろうとしたんだもんな」

「そうだな」