「麗先生が婚約するはずだったのは、和也じゃなかったんですか?」

「だから、おじ様は私にあんなこを、おっしゃたんですよね?!」

俺は実緒の肩に手を置き、落ち着かせる。

「実はね、春斗にきた話だったんだよ。」

「だから、春斗には麗先生と結婚してこの病院を継いでもらい、君には和也との結婚を許した。」

「しかし、春斗はその話を断ってしまったんだよ。」

「その時、和也は気づいてしまったんだ。春斗の本当の気持ちをね。」

「和也は、麗先生が自分に気持ちが移ったのを利用して君と春斗を・・・。」

「あれは、和也が言い出したことなんだよ。」

「ただ、まさか麗先生が君にあんな事をするとは計算外だったんだが・・・。」

「和也は私に土下座までして、君と春斗の結婚を許して欲しいと頼んできたんだ。」

「もちろん、自分は麗先生と結婚するつもりはないと、ここを出ていくつもりだとも言った。」

「2度とここへは戻らない。実緒ちゃんを困らせたりしたくないから。」

「和也はそこまで、覚悟を決めていたんだよ。」

「まさか、こんなことになるとは思ってもいなかったんだがね・・。」

父さん・・・・。和也・・・・。すまない・・・。

俺は心の中で、何度も叫んでいた。