「よし、帰っていいぞ。」

「はい。……あ!先生!」

「ん?」

「先生、新しい先生?前はいなかったですよね?」

私は最初に思った疑問を口にした。

「ああ、寝てたんだもんな。俺、ピンチヒッター。前からの先生が長期休みになって、代理たのまれたの。元は家庭教師やってるんだ。」

へえ〜。

家庭教師なんだ。

私は、もっと先生を知りたいと思った。

「じゃあ、年齢はっ?」

「ん、24…って、これも自己紹介のとき言ったんだけどな。」

24歳か〜。若いな〜。

「だって、私寝てたから聞いてないもん!」

「いや威張るなよ。寝てたお前が悪いんだろ。」

「趣味は!?」

「………」

あれ、呆れられた?

調子乗っちゃったかな…。

「席つけ。」

「え?」

「いいから。」

私は言われた通り前の方の席に着いた。


するとーー


「えー、これから自己紹介をします。名前は黒木十夜、年齢24歳。趣味は映画鑑賞で、好きな食べ物は〜……」

先生は、少し照れ臭そうに自己紹介をしてくれた。


恋に落ちるのは、一瞬だった。


私のために自己紹介をしてくれる先生が

教壇に立つ先生が

ちょっと着崩したスーツ姿の先生が

私にはすごくかっこよく見えた。


私は、先生に恋をしたーー。