辻堂さんは相変わらず人参が嫌いだ。
ハンバーグの付け合わせのグラッセは、何とか飲み込むように食べている。ポテトサラダに入れられたものは、小さいからかほかの具材と混ざっているからなのかそれほど気にしていないようだけれど、それでもほんの少し困った顔をしている。

人参嫌いの辻堂さん。

それが私の中の彼だった。仕事している姿は分からないが、子どもみたいに食べるさまがおかしくて、ふとした時に見てしまうようになった。それと同時に気が付いたのは、そのほかにも嫌いな野菜がありそうだということ。多分、グリンピースになす、ほかにも何かわからないような野菜を食べるときに一瞬手が止まったりしていた。
その代わりに、甘いものが好きみたい。
たまに定食につくデザートをうれしそうに食べている。今日のデザートはチョコレートケーキ。

最後の一口は、名残惜しそうにゆっくりと口の中に入れられていった。