「………………はあっ……はあっ……」

五月のある日。深夜十一時頃。
外からの光が僅かに差し込んだ薄暗い部屋の中で、一人の少年は息を乱していた。

彼の周りには四人掛けの長机や椅子があった。少し離れたところにはいくつかの電子端末が並べられて、教卓や大きいディスプレイがそのすぐ側に配置されている。

そこは彼が普段は生徒として通う学校の二階にある、彼のクラスとは違う別の教室だった。その教室の中央の机と机の間に身を屈め、隠れる様に彼はいた。

見ようによってはかくれんぼをやっているともとれそうな格好だったが、実際はそんな和やかな理由ではなかった。

ただどうしてそんな所に、それもそんな夜遅くに教室にいるのかと問われてもそれを彼は説明することは出来そうもなかった。そもそも彼は現状の把握さえまだできていない状態だったからだ。