「げっ、何でいるの?」


「愛の力で見つけ出せるっていつも言ってるじゃない」


「愛・・・お金じゃなくて?」


「意地悪な事言うなら意地悪し返すよ?」


「意地悪な事言わなくても意地悪なく・・・」



あっ・・・、私は今は家具。


と、思い込むように視線をそらしてしまう。


不満げに呟いた美人な人の唇を、黙れと言わんばかりに一琉の叔父さんが塞いでいたから。


つまりはキスシーン。


美男美女のそれはまるで映画の1シーンの様だけど・・・。


恥ずかしい・・・。


熱くなる頬を押さえながら、ちらりと盗み見ればようやく叔父さんを引き離して奥様が赤くなりながら怒りの声をあげているところだった。


「だからっ、人前で簡単にキスとかしないでよ!」


「えっ、家でなら簡単にしまくっていいの?」


「上げ足取る様な事言わないでよ」


「はいはい、怒らないでよ。続きは家にしておくからさ」


「なに、さらっと危険なこと言ってるわけ・・・」


「ぶっ・・・・」



思わず噴き出してしまった。


2人のやり取りがなんだか本当に仲が良くて、少しうらやましくなったから。


私の笑った声に反応して、美人な一琉の叔母さんが僅かに照れながら私に微笑んだ。



「こんな感じよ・・・。駆け落ちの行く先は・・・」


「なんか・・・うらやましいです」


「好きだけで・・・ここまで来れちゃうものだから・・・」


「・・・・そうみたいですね・・・」



クスリと笑うと2人は微笑んで、外に出ていこうとした時に叔父さんが私を振り返る。



「凪ちゃん・・・、俺はさ2人が本気になるなら全力で動くつもりだから・・・」


「はい・・・・」


「つまりは・・・、君の事は気にいってるって事。嫌いじゃないから誤解しないでね」



ニヤリと笑うとガラス戸はガラリと静かに閉じられた。


その言葉に力なく笑ってしまう。


負け知らずで強気な人。


一琉がなつくのも当然だな。


何だか悩んでいた事を全てかき消されたような時間。



「考える前に動け・・・か・・・」



そう呟くとクスリと笑って時計に視線を移した。