小さく、だからあの家系は・・・。と皮肉っぽく言ったのを聞き逃さず。


あっ、この人は一琉に関わる世界が嫌いなんだと理解した。


やっぱり何だか共感してしまう。



「ねぇ、凪ちゃん。一琉を思うなら一緒にいてあげてよ。・・・あの子には自由が似合っているし・・・」


「でも・・・、それは・・・」


「それに・・・、多分ね、一琉の両親はそれを許すわ」


「えっ・・・」


「両親はね。・・・他は・・・うんバカな旦那様が何とかしてくれると思う」



相変わらずバカ扱い・・・。


でも、大好きだから言えるんだろうな。


バカと言いつつ誇らしげに旦那様の事を語る目の前の人が綺麗で、こんな風に信頼していけるなら駆け落ちもいいな。と、思ってしまう。



「・・・駆け落ちして・・・・後悔してませんか?」



躊躇いつつも口をひらくと、その人は呆気に取られつつもすぐににっこり笑ってきた。



「駆け落ちしたのは私の誇り。こんなに幸せでいいのかなって・・・」



ああ、綺麗だな・・・。


幸せで仕方ないといった表情に思わずこっちも微笑んでしまう。


どれくらい話していたのか、その人が時計を目にするとフッと微笑んで外を見た。


外の雨はいつの間にか上がっている。


いつの間にか軽くなった私の心と比例しているかの様なタイミングに僅かに驚いてしまう。



「じゃあ、・・・私も行かなくちゃ」


「えっ・・・、帰られるんですか?」


「うん、凪ちゃんの顔見に来ただけだから」



クスリと笑うとその人はガラス戸に静かに手をかけて、その瞬間ガラリとガラス戸が勢いよく開いた。


そして目の前に立っている人物に僅かに怯む。



「あっ・・・、やっぱりここに来てたんだ」



ニヤリと目の前の美女を見下ろすのは、何だか自然と警戒してしまう一琉の叔父さん。


・・・な、筈。


自信が持てなかったのは、いつもの表情と違いかなりの柔らかく、はっきり言えば愛情が溢れんばかりの視線を目の前の綺麗な人に向けていたから。