「可愛いよ~、夏希ちゃん」
「な、凪ちゃ~ん、いいのかな?」
「いいの、いいの。秋光さん、多分夏希ちゃんに迷惑かけたの気にしてるんだよ」
まぁ、借りを作りたくないとも言っていたけども。
目の前で夏希ちゃんがそわそわと鏡を取り出して、自分の髪についている髪飾りをそっと触れながら確認するのを微笑ましく見つめていると。
ガラリとガラス戸が開いて、雨に軽く濡れた秋光さん本人が現れた。
「凪ちゃんあのさ~・・・・」
秋光さんの視線が瞬時に夏希ちゃんに移って、夏希ちゃんがビクリと肩を揺らして身をすくめた。
「あ・・・夏希いるじゃん。この前悪かったな」
秋光さん、もうちょっと笑顔で話してほしい。
夏希ちゃんビビってるから。
真顔な上に上から見下ろす感じが軽く威圧感があって、私でさえも他人だったらおどおどしてしまいそうだ。
今にも泣き出しそうな夏希ちゃんの髪に留っている髪飾りに秋光さんが触れて。
ぐっと顔を近づけてそれを確認する。
夏希ちゃんが思わず視線を落とすのを横から眺めながら、そろそろ助け舟を出すべきかと口を開きかけると。
「似合ってんじゃん」
「えっ・・・」
フッと軽く口元に弧を描いた秋光さんが夏希ちゃんの頭をくしゃりと撫でた。
瞬時に夏希ちゃんの顔が真っ赤に染まるのを確認して、何故か私まで赤くなりそうで。
チラリと秋光さんに視線を戻すと、秋光さんはそんな夏希ちゃんにクスリと笑う。
「あ~、やっぱり林檎っぽいなお前」
「・・・・あ、あの・・・、これ・・貰っても・・・」
「ん?返されても困るんだが・・・」
「は、はい・・・スミマセン・・・」
「(何故謝る・・・)」
「ぷっ・・・」
2人の何とも言えないやり取りを見て思わず噴き出してしまった。
微妙な空気なのに何だかお似合いに感じるのは私だけかな。



