「核心つくね…。
一琉と結婚する気はあるのかな?」
また、結婚……。
朝から続くその話題に頭がグラリと揺れてしまう。
いや、むしろ一琉と出会った時から上がるその話に、相当意味があるのだと理解し始める。
「結婚って……、私と一琉は知り合ったばかりですけど…」
「知り合ったばかりで結婚はいけない?」
「いけないというか……、あまりに早急でないかと…。お互いによく知らないし…」
「ふぅん………」
「………」
冷たい響きにゾクリと震える。
興味が薄れたような、呆れたような反応に怯んで視線が逃げてしまった。
厚い雲に覆われた空が不穏な音を立て始め、今にも降り出しそうな空を見上げた。
「一琉と凪ちゃんはね、住む世界が違う人間なんだよ。陳腐な言い方すればね……」
「………何となく…分かってます」
「でもね、一琉は君を望んでる。…それをする事で事は大きく動くんだよ……。不本意にも、俺も動く事になる」
「………」
「誤解しないで……。可愛い甥の事だし、協力は厭わない。だけどさ…、当事者が煮え切らないのに危険を犯すなんてしたくないんだよね」
皮肉の混じった笑みで見上げられ、もっともな意見に言葉を失う。
「私…は……」
喉の奥が熱い。
上手く出ない言葉達がそこでつかえて苦しくなる。
それでも……言わないと……。
「一琉に……傍に……いて欲しい…です……」
絞り出すように口にした言葉は私の揺るがない本音。
結婚とかは分からない、でも、傍にはいてほしい。
一琉は私の弱さを受けとめて傍にいようとしてくれるから。
サワサワと柳が雨の匂いを含んだ風に煽られる。
少しの間があき、ゆっくり顔を上げると恐怖としていた笑みは消え、柔らかい微笑みが向けられる。
「いいんじゃない?」
「えっ?」
「一緒にいたい。って気持ち以外で他に理屈いる?」
呆気に取られ言葉を失っていると、クスクス笑いを返しながら綺麗な顔立ちのオジサマはゆっくり立ち上がって私を見つめた。



