私は久しぶりのそれにテンションも上がってしまい。


ワクワクと子供のように熱々のホットケーキにバターとハチミツをかけていく。


一口大に切り分けて口に運んだそれは、懐かしくて甘くて口の中でとろけるようだった。



「美味しい……」


「本当!?良かったぁ、久しぶりに作ったから心配だった」


「本当に美味しいよ…、凄い…」


「俺は凪のおにぎりのが好きだけど…」



あんな握っただけの物と比べないでほしい。


対象違いで恥ずかしいよ。


それでも嬉しくて素直な頬は私の熱を素直に表していたらしく、一琉が優しくその頬に触れてくる。



「少しは惚れ直してくれる?」


「ん……、ちょっと…、カッコイイ」



素直に…、でも視線はそらしながら呟くと、奨励でもされたぐらいの目の輝きを映しだした一琉が子供みたいに笑ってくる。


「凪、やっぱり結婚しよ」


「はっ!?だから、あんたはどうしてそう突拍子もなく…」


「早く凪との繋がりを強くしたい」


「………」



その言葉を告げた時の一琉の表情が真剣で、いつもの調子で返せずに固まってしまう。


一琉は私の左手を流れる様に絡め取って、自分の唇を手の甲に押し付ける。


ちゅっと、小さな音を立てて離れた唇が甘く優しい言葉を私に絡めてくる。


ハチミツみたいに極甘で、絡みついていつまでの残るとろける甘さ。




「凪……、俺と結婚してくれませんか?」



ふざけ要素の無い真剣なそれが、世で言うプロポーズだと理解するのに時間がかかる。


ガチャリとマナー違反にフォークを落として、真っ赤な顔で一琉を見つめてしまう。



「一応…、かなりの本気で俺も言ってるよ。全てを崩し去っても……凪といる未来を選びたい……」


「そ…、な…、だって、会ったばっか……」


「うん……、でも、俺には余裕がない。……凪が俺と結婚してくれるなら本気で動かないと駄目なんだ……」


一琉の目に僅かな焦りが見え隠れして戸惑ってしまう。


私とこのまま一緒にいるという選択は一琉の人生を大きく左右する事らしい。


そんな内容も分からない契約みたいな危険を迫る一琉に、私はどう答えていいのかわからないよ。