「あれは……一琉の叔父さんなの?」


答え合わせを求めて口にすると、一琉は服を着てからニヤリと笑う。


きっと肯定の笑み。


「凪、早く着替えておいで、風邪引いたら大変だよ」


会話に含みを残しながら一琉は先に外に出ていった。


そうか、だとしたら私の名前を知っていてもおかしくない。


何だか妙に納得して自分も着替えて、番台を片付けていると秋光さんが中に入って来る。


しかも何だかうんざり顔な所をみると、一琉に何か愚痴られたのだろう。


確かに、一琉からしたらかなり根に持ちそうなタイミングで秋光さんは乱入してきたんだ。


「凪ちゃん、コレお祖父ちゃんに返しておいて」


「あっ、お祖父ちゃんに鍵を借りに行ったんですか?何で開けられたのか不思議だったんです」


「昨日この裏に住んでるって聞いてたからさ。絶対的な電話だったから鍵かけてる意味も分かってたんだけど乱入させてもらったよ」


申し訳なさそうに笑う秋光さんに苦笑いしか返せない。


確かに、どうやら秋光さんには立場があるらしく、仕事ならば仕方ない事なんだと思うけど。



「一琉の叔父さんて何者ですか?」


私の質問に秋光さんは僅かに目を見開いて、すぐに含みのある笑みに切り替えた。


「一琉は?じゃなく、叔父さんにきたか…」


「だって、秋光さんの立場上一琉の言う事は絶対みたいなのに、その反感を買っても優先する相手なら一琉より上の存在ですよね?」


「中々鋭いとこつくね。でもさ…、口が軽い奴がやっていける世界じゃなくてさ。簡単にぺらぺら話す男じゃないんだよ?」



なるほど…。


納得のいく切り返しだ。


諦めて溜め息をつくと秋光さんはクスリと笑った。