あっ……。


この夢は嫌……。


金魚鉢を手にする私。


中には赤と黒の金魚がいて、その水面に映るのは死んだ目をした子供の私。





嫌だ……、だって、コレは夢じゃない!


コレは……。




ビクッと体が反応して目が覚めた。


急に光を取り入れた眸に映るのは、見慣れたアパートの天井だった。


心臓がかなり早くて、額に触れてからなだめるように胸に手を置くと…。


ん…?


違和感に何度も体に触れて、ガバリと起き上がった瞬間に絶句する。


寝起き一発の衝撃。


私……、何で全裸なの?


パニックになってまわりを見渡した私を更に追い詰めたのは、隣で同じように全裸で眠る一琉だった。


ちょ…っと、待って…。


朝起きてさ、裸で目覚めて隣に全裸の男がいた場合さ、何も無かったって確率は何%?!


かなり焦りながら体に異変が無いか確認してしまう。


確か、初めての後は痛いって言うし、血だって……。


ハッと思って布団をはぐって、そして再びすぐに戻す事になった。


み、見ちゃった。


いや、見慣れてはいるけど、見慣れてない状態というか…。


一琉を起こして問いただすにはかなりの勇気が必要で、とにかく隠すべき所は隠したい。


一琉がしっかり寝ているのを確認するとスルリと布団から抜け出し服を取りに歩きだした。


押し入れを開いて下着を手にした瞬間に鳴り響く携帯のシャッター音。


咄嗟に振り返ると、マットレスに横にうつ伏せになったまま笑顔で携帯片手に手を振る一琉。


「おはよ凪。セクシーな後ろ姿ご馳走さま」


「い、いち…る、…今……撮っ…た……?」


震える手で指差すと一琉はクスリと笑って携帯の画面を見せてくる。


あっ、死にたい…。


液晶パネルに写し出された写真は明らかに私の無防備な後ろ姿で。


赤と黒の金魚がハッキリ写る。


「俺、これだけで抜けそう……」


携帯の画面に唇で触れながら妖艶な微笑みを向けてくる一琉にクラリと揺れた。


こ、この写真で脅迫される!


弱みを握られた気分だ。