蝶は金魚と恋をする





Side 夏希

ど、どうしよう。


凪ちゃんが呼ばれて慌ただしく中に戻るのを見送って、1人残されたまま秋光さんと呼ばれた人を見つめてしまう。


辛いのか、冷たいタオルを目の上に乗せて微動だにしない彼を見て、立ち去っていいのかがわからない。


正直、男の人を目の前にどんな反応をしていいのかわからないよ。


「あ、あの?大丈夫……、ですか?」


「あっ?」


こ、恐い!


ビクリッと反応すると、タオルをずらして私を見つめてきた目と視線が絡む。


怯えながらその目を見つめていると、秋光さんが気まずそうに眉根を寄せた。


「ああ…、悪い……。なつ…、ナツキ?だっけ?」


「はい……、夏希です…」


名前…、覚えてたんだ。


自己紹介をしたわけでないのに覚えられていた名前に驚いた。


でも、自分も覚えていたんだから不思議ではない。


「………潰して悪かったな。……怪我…してねぇか?」


「だ、大丈夫……です…」


「…………あ~……、しんどい……」



かなり辛そうな声で再び目を閉じる秋光さん。