あっ、時間……。
そう思うのに一琉のキスが優し過ぎて離れたくない。
依存だよね……。
甘くて媚薬みたいで常習性の高い麻薬みたいだ。
啄ばんで角度を変えて深まる重なりや、吸いつく際に響くリップノイズが鼓膜に響く。
昨日までこんなキスも知らなくて、同年代の男の人に抱き締められる事もなかったわけで。
無知で無垢な部分に一琉が好きな様に色をつけているみたいだ。
不意に酸素を吸いたくて僅かに唇が緩んだタイミングで、馴染みの無い衝撃的な感触を与えられる。
ビクリッと反応して唇を離そうとすると、すかさず首の後ろに一琉の手が回って、唇の隙間は埋められる。
な、何っ、一琉の舌……が…。
この……感触……変!!
抵抗しようと胸を押し返すのに、ピクリとも動かない上に足の間に一琉の足が入りこむ。
逃げる舌を舐めて絡めて息と唾液が絡む中、酸素さえ失い始める激しいキスに頭の芯から溶けそうになる。
いち……る……。
頭……バカになりそ……。
そんな朦朧とした頭をクリアにしたのも一琉の行動で。
スルリと腰から侵入した指先が背中を這い上がって下着に手をかけると、手慣れた動作で金具を外す。
ちょっ、……と、待て!
なんて、言葉になる筈もなく、必死にもがく様も無駄な抵抗。
躊躇いなく前にきた指先が私の胸の膨らみを柔らかく揉んでいく。
ヤダッ!
一琉のバカッ!!
抵抗故の逃げ口に下に下がっても一琉の足に阻まれて、力任せのやり方も男の力に敵うはずない。
逃げれば逃げる程、絡みついて動きを止められる。
蜘蛛の糸のようだ。
胸を柔らかく揉んでいた一琉の指先が、キスや今しがたの胸への刺激で反応した部分を軽く摘まんてきて。
感情の決壊。
自分の許容範囲を越えた瞬間に、あり得ないくらいの力で一琉を引き離した。
瞬時に捉えた一琉の表情が、かなりの驚きの色から戸惑いに変わっていく。
「凪っ、……凪、ごめん……」
今までに無いくらいの焦り方で謝るのは当然かもしれない。
許容範囲を越えすぎた行為で私の顔が涙でグシャグシャだったから。



