「……やっぱ、犯罪者?」


「ううん。でも、ワケあり」


「面倒だから帰って」


「餌付けついでに一宿一飯お願いします」



何なのこいつ。


初対面の女の部屋に一宿一飯って…。


ああ、ワケありとか言ってたっけ。


改めて上から下まで彼の姿を確認すると、上に黒いTシャツに黒いジーンズのラフな格好だけど、身なり自体はその辺の人と大差ない。


ホームレスとかではなさそうだし、やっぱり犯罪者?


「ね、お願い。お腹すいて限界だからさ」


「慈善事業はしてないんだけど」


「なら、俺が飢え死にしたら祟って出るよ?」


「盛り塩するから大丈夫」


「うーん。ね、お願い」



首をやや傾げながらおねだりする様に微笑まれて、うっかり可愛らしいと思った自分に驚いた。


でも、な、信用するには証拠が足りない。


そう思うと、おねだりスタイルを無視して階段を登りきった。


階段を登って2番目の部屋に鍵を差し込むと、負けじと後をついてきた男が私の真横に立って見つめてくる。



「どうしても、……駄目?」



卑怯だなぁ。


1歩引いた、困ったような笑顔で再度のおねだり。


この男はきっと自分の容姿の使い道を理解しきっている。


「………大した物は作れないよ?」


「食べれたらなんでもいい」


私の一言に可愛らしく微笑み返してきたその男を招きいれて、私の平穏が崩された。


部屋に入るなり物珍しそうにキョロキョロする男をとりあえず畳の上に座らせる。


何だか楽しそうに微笑む姿が印象的で、一瞬見惚れかけたけどすぐにキッチンで男用の餌を作り始めた。


コレといって材料も無いし、炊飯器からご飯を手に乗せ三角形に握り始める。


中身は梅と昆布でいいわよね。


2つ程作りあげると今度は卵を溶いて焼き始めて。


綺麗にクルクル巻いていき、焼きあがると一口大に切ってお皿に乗せていく。


まぁ、質素だけどタダメシだし。


そう思いながら男の目の前にそれを差し出す。


無言で置かれたそれに視線を走らせた男が不思議そうにおにぎりを見つめて、直様その視線が私に移った。


何よ?不満なわけ?


見られているから見つめ返すと、男の口からあり得ない言葉が零れ落ちた。