一瞬で危険な笑みに姿を変えると、一琉は私をマットレスの上に投げ出して跨ぐように覆いかぶさってくる。


ご、強姦される…。


「凪、せっかく俺がキスで我慢してあげてるのに我儘いったらお仕置きしちゃうよ?」


「い、いやぁ!あ、秋光さん、秋光さん!貴方のご主人様暴走してます!何か言って~!」


「何かって……。あっ、そうか、既成事実作った方が結婚よりパンチあるかな…」



と、顎に指を置いて真剣に思いついた事らしく呟いた言葉に一琉がニヤリと笑って私を見下ろしてきた。



「だって凪。子作り目当ての関係は不本意だけど……、仕方ないよね?」


「な、ないっ!ヤダ!秋光!!」


必死になり過ぎて秋光さんに呼び捨てで助けを求めると、面倒臭そうに言葉を模索しだす。



「あ~……、一琉、強姦は訴えら…」


「秋光、特別ボーナス欲しく無い?今からお前は空気になれ」


「…………」


「秋光さん!?」


「悪いな、秋光は一琉様の忠実な下僕ですから…」


ば、買収された。


目の前で犯罪的な売買が行なわれたよ?!


しかも商品私だし!!


「い、一琉っ!本っ当に嫌っ!したら絶対に嫌いになる!」


ハッキリ嫌い。を強調すると、一琉は双眸を見開いてから細め溜め息をついた。


「………凪に嫌われるのは嫌……。でもさ、何か代償頂戴よ……」


「だ、代償?」


「凪としてもいい特別な代償」


あっ、狡い。


再び、寂しげな仔犬の目で見下ろして懇願する一琉に、自分の何を代償にしていいのか分からない。


でも黙っていたらとんでもない要求がきそうだし……。


「あっ……、お風呂」


「お風呂?」


「うん、同じお湯なら浸かっても……いいかな……」


「………何か…、凪らしくない」


「嫌なら破断で」


私の申し出に一瞬疑いの目と思考を巡らせた一琉だったけど、最終的に小さく頷いた。



「ま、いいよ。凪の言い出した事だから期待は出来ないけどね」


「おっ、一琉が折れるなんて珍しいな」


「焦らされてからするのも、また一興かと…」



言葉尻にたっぷり含みを入れて私の体を視線で犯す一琉にゾクリと危険な悪寒が駆け上る。


一琉と一つ屋根の下の生活はかなりの危険と隣り合わせだと今更気がついてしまう。