ポタリポタリと背中に一琉から落ちる水滴が当たって、その度にドキリと心臓が跳ねてしまう。


どうしていいのか分からない。


自分の動悸が速まる中、一琉の唇が私の首の後ろに触れてくる。


瞬時に胸から発火した熱が耳まで伝わって、私の全てを赤く染めていく。



「一琉……ヤダ……」


「ん………もう、勃っちゃった……」



何が?とか聞くほど物を知らないわけじゃない。


その言葉で更なる混乱と動揺に身を置くと、一琉は私の体を自分に向けさせた。


空気に触れる自分の素肌の胸を咄嗟に隠して一琉を上目遣いに見つめてしまう。


「焦らさないで……」


「じ、焦らすとかじゃなくて……」


どうしよう、どうしたらいいんだろう?


自分の中の葛藤をどう伝えたらいいのか分からずに、一琉を見つめて固まっていると。


痺れを切らしたらしい一琉があっさり私の両手を畳に押さえこんでしまった。


同時に晒された普段人に見せない胸が露わになり、パンクした感情が顔をこれ以上ないってくらい染め上げた。


さすがに私の顔が常軌を逸していたんだろう。


一琉もその目に驚きの色を移して、頭に浮かんだ疑問を半信半疑で口にした。



「……つかぬ事をお聞きしますが凪さん…」


「は…い……」


「………もしかして初めて…ですか?」



その言葉に更に羞恥に沈んでしまい、一琉から視線を外して俯いてしまう。



「は、初めて……、だから……見ないで……」


今にも泣いてしまいそうな声で呟くと、まるで珍しい生き物を見た様な視線で一琉が私を見つめてくる。



「……凪っていくつ?」


「……23。……一琉は?」


「25だけど……。はぁ、23かぁ…」



あまりの驚き様になんだか傷ついてしまう。


23にもなって経験ないのかよ?と、言われているようで辛い。



「…………23で初めてだって馬鹿にしてるでしょ?」



先に言われたらショックで立ち直れそうになかったから先手を打って自虐的に言葉にしたけど。


情けない事に声が震えて今にも泣そうだった。


だけど予想外にもフワリと柔らかい笑みを浮かべた一琉が優しく私の唇に自分の唇を重ねてくる。


首の後ろに手を回して頭を支え、唇の重なりを深めていく。