バレない嘘をついてよ。


「こんばんはー」


午後5時半。
私はバイト先に着いた。

パンの香ばしい匂いがする。


「あら、梓ちゃんじゃない」

「こんばんは」


私に声をかけたのは、雇い主の島田さんだった。

いつも笑顔が絶えない島田さんは、この辺りでは人気者らしい。

島田さんは、人柄が良く気さくな人だから顔見知りが多い。


「着替えたら、ちょっとパンを並べるのやってくれる?」

「分かりました」


私は更衣室に向かった。