バレない嘘をついてよ。


「そーいえば、あんた今日バイト? 」

「うん、バイト」

「そっかー、ちょっと一緒に見て欲しかった店があったのに……」


口を尖らすマヤに私は、”また今度ね”と言った。


「てか、バイトとか大変じゃない? 確か……パン屋だっけ? 」

「うん、そう。駅に近いパン屋で働いてる。お小遣い稼ぎにやってるから、別に苦とは思わないよ」

「ふーん。……じゃあまた明日ね」

「ばいばい」


マヤと別れる場所。
マヤとは駅は同じだけど、電車が違う。


私はスカート丈を一段折り曲げ、自分が乗る電車の方へと歩き出した。