大切な人なんだから。

最愛の人なんだから。

泣くのなんて、当たり前だろ。

だけど、泣かなかったのは。

泣けなかったのは。

君が、僕を強いねと言ったから。
レオニスと呼んだから。

その思い出を、思い出にしたくなかったから。

だけど、もう。

君は居ないんだ。

それはどれだけ抗ったって、変わらない真実。

桜の花が咲いて、散って。
新緑の緑が輝いて。
葉が黄色や赤に色づいて。
全てが真っ白になっても。

そのどれかひとつでも、君とは、一緒に過ごせない。
ただの一瞬も。


――朱李。僕はもう、それを、受け容れなくちゃいけないんだね。

時の止まった君を追い越して、僕はもう、行かなくちゃいけない。