神成と出逢って、自分は助けてもらった。
けれど、神成を助けることはできなかった。

神成に何があったのか、私は知らないし、神成も話そうとはしなかった。

それが医者と患者の当然あるべき形なんだと思う。

だけど、それが近かったから。
その距離が、短かったから。

叶うなら、神成の痛みを、和らげてあげたかった。
知りたかった。

それだけが、心残りだ。


あの人は、ちゃんと泣けているんだろうか。


夜空に星が見える時は、何度も、問いかけた。



「3番入りまーす。」


13時からの休憩に入ろうと、先に昼に行ってきた人と交代する。


「あの……」


入っていたレジを抜けて、バックヤードに行こうとした矢先。

背後から呼び止められて、私は振り返る。


「はい、あ……」


そして、そこには、一度だけ会った事があり、そして、あまりにまじまじと見られた為に覚えている視線があった。

普段着だった為一瞬分からなかったが。



「く、ぜさん?」


大きな身体を縮ませ、申し訳なさそうに立っている男性は、神成の大学の同級生で、料理店を営んでいる、久世に違いなかった。