レオニスの泪



「葉山さん?」


警察の声で、ハッとした。


「大丈夫ですか?」

恐らく何度も名前を呼ばれていたのかもしれない。
パタパタと膝に落ちている涙が、まるで他人の物のように見えた。

「あ、はい……すいません……」

慌ててそれをぬぐって、顔を上げると、再び警察が口を開いた。

「今言った通り、木戸の線が濃いので、木戸の身辺を洗ってみます。」
「あ……はい……」
「葉山さんは、こちらで、我々から連絡があるまで待っていてください。」
「はい……」
「万が一犯人から連絡があった時の為に、電話は機械につないでおきます。数名はここに残りますから。」

握りしめた両方の拳は、ふるふると震えている。
なにがなんだか、周囲の動きはなにひとつ理解できないが。

たったひとつだけ。慧が居ないということが、自分の胸を突き刺すようだった。