どこで。
一体どこから、歯車は狂ってしまったのだろう。
自分は、どうして、自分の事ばかり考えて、慧を守ってあげられなかったんだろう。
慧は、私に、言わなかった。
一言も、言わなかった。
そんな出来事があった、と言う事を、話さなかった。
今思い返してみれば、慧が隠し切れなかった変化に気付くことは出来ただろうと思う。
慧がいつもと違うと。
現に保育所の先生は気付いていた。
小さな変化だが、気になると言ってくれていた。
私はそれを気にし過ぎだと思い、深く真剣に考えなかった。
だけど、慧は、確かに、抱えていたのだ。
『大人が、親が――君が、『頼れる世界』を見せてあげないと。』
以前に、神成が、私にそう言った。
「慧…………」
涙は気付かないうちに上ってきて、駆け下りていく。
後悔はあとからくるもの。
だから、先に見える訳ない。
だけど、私は、見せてあげられなかったんだ。
慧に、『頼れる世界』っていうやつを。


