レオニスの泪




「……な、にを……何を、話して、いたんですか……」


口の中は、カラカラに乾いていて、喉が張り付いている。

やっとやっとで、訊ねると、警察は少し躊躇いがちに口を開いた。


「お母さんが、あの医者と会うのは、病気だからだ、といったような内容をですね……その―……」



『さいきん、あの人と会ってないのー?』

『あの人ってー?』

『お医者さん』

『な……なんで―?』

『じゃぁ、ママ、具合は悪くないんだぁ。』


「鬱病なんだと。だから、止めた方がいい、とか、そういう風に、唆していたらしいんです。あなたの気を引くために。」


『うつびょうってどんなびょうき?』

『……慧はその病気の名前、どうして知ってるの?』

『んっとねぇ……忘れちゃった。』


慧は大丈夫だなんて、どうして思ってしまったんだろう。


言っていたじゃないか。

木戸は。


『息子……慧、君の事が大事なんだったら、あの医者とはもう会わないでね。』

確かに、そう言っていたのに。