レオニスの泪


部屋に戻ると、電話をしていたらしい警察の一人が、私を見て――


「今入って来た情報ですが、木戸は慧君に何度か接触していたようです。」

そう言った。

「――え?どういうことですか?」

突然放り込まれた情報に、戸惑い、一瞬にして頭が混乱に陥る。

「どうも、保育所の周囲をうろついていたみたいですね。それで、慧君を呼び寄せて、会話を数回したと話しているんです。」

「――――」


色んなものが、色んなことが、頭を駆け巡った。




『あの……少し気になる程度のお話しなんですけれど。』

『――近頃、慧くんが、いなくなることが、あるんです。』

『一人で、どこかへ行ってしまうんですね。目で追ってみると、まぁ…柵の隅の方にいたりするんです。』

『何もしないで、隅っこでただぼうっと道路の方を見てるんですよ。『何してるの?』って訊いても、はぐらかして笑うだけで…。』