神成は、私の何でもない。
もう、主治医でもない。
恋人でもない。
友人でもない。
ただの近所の人。
もしも、このまま、医者以上に関わる関係を、警察に突き詰められたとすれば、それは、神成にとっても、私にとっても、マイナスだ。
私が、自分の傷を癒したい故に、抱いた恋心を、伝えたくて、伝えられなくて、苦しくて家を出て、神成に会いに行ったことが、今回の引き金になったのだ。
その責任は、私にある。
神成は自分の傷を癒したくて、私を放っておけないというだけで。
私みたいに、神成をちゃんと見ている訳じゃない。
神成は、私じゃなくて、『アカリ』さんを見ている。
「そんなことない……」
神成の顔が、僅かに歪んだ。
それは、不愉快に彼が思っている証拠だった。
だから、見ないように俯いて、彼の背中に回って、押した。
「行ってください。」
「祈さん!」
警察の手前、声を荒げることはしないが、ドアの外へ追いやろうとすると神成が抵抗する。
「――先生。」
――言いたく、なかったのに。
そう思いながら、私は、笑っていた。
「私は、アカリさんじゃありません。」


