レオニスの泪


親が子にしてあげられることは、ずっときっと少ない。

だけど、子供が考えている以上に、きっとずっと大きい。

重い責任だ。

自分はそれに、圧倒されたのではなかったか。

担えるかと、自問したのではなかったか。

幾度となく壁にぶつかって、乗り越えて来たのに、その全てが今。

音を立てて崩れようとしている。



「――慧っっ!!!」


嘆きともとれる叫びが、内から飛び出してくる。

朝焼けが、目に、染みる。

涙で、全て溶けてなくなってしまいそうだった。

溶けて、なくなってしまいたかった。


「けい……」

今度は、途方に暮れて、嘆願するように、懇願するように、すすり泣いた。

夏には、背の高い雑草でうめ尽くされる広場は、今は枯草だけになっている。

その場に、崩れるように、座り込んだ。

力が抜けていく。
冷たい風に吹かれて、体温が下がる。
どうせなら、この冷たさと、一体化してしまいたい。


何も映ることのない目で、ただただ、虚しく空を見つめた。


――失敗は、許されなかったのに。

上手に子育てできたと思える瞬間は、数える程もない。

なのに、近頃は、自分に時間を取り過ぎて。

自分の事しか、考えてなくて。

親として、失格だ。